番外編「雨に似ている」1話読み切り
芳ばしい香りと立ち上る湯気、「ありがとう」と言った声は営業で何度も繰り返す声とは明らかに違っていた。



「どういたしまして」

くすり、微笑んだ顔を温かいなと感じた。


彼はトレーを台に置き、ポケットに手を入れ、使い捨てカイロを引き出し「まだ暖かいから」一言添えてサッと掌に握らせた。


向かい合わせた店のアルバイトの青年、その優しさに胸が熱くなる。



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