番外編「雨に似ている」１話読み切り

舞い散る桜と桜の花弁と戯れる少女。

少女の薄紅色のスーツが羽衣に見える。



どうかしている、桜の気にあてられたか。ふと思う。


いや、のんびり桜を眺めている場合ではない。


音楽部、楽譜書庫で「花」の楽譜を即行、借り出さなければ……我に帰り足を速める。


入学式まで約１時間半。
時間がない。



ったく……ほぼ、初見弾きに近い状態か……。


僕は、モーツァルトではない。勘弁してほしい。




桜に宿る神様。
どうか貴女の力を貸して下さい。


手を合わせ祈るような気持ちだ。




さわさわと桜の雨が舞っている。