番外編「雨に似ている」1話読み切り
きっと珈琲と使い捨てカイロ、それにメールで友達に呼び掛けてくれた為だと自分に言い聞かせる。


冷たい風が路地に吹き込み上着の襟を立て、ふと空を見上げた。


小さく星が輝いていた。


はらはらと幽かに降ってくる白い雫は、風に舞い儚く消えていく。


「千鶴さん、」

店の奥さんの声に振り返る。


「雪降ってるから、残っている商品を中に入れてくれる?」

短く返事をして、台の上にある商品を店の中へ運んだ。


「あらっ、もうそれだけ? ずいぶん売ったのね」

奥さんは外に出した台をかかえながら、明るい声を上げた。

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