番外編「雨に似ている」1話読み切り
「貴方が要らぬといった花、私はこれと同じ……実をなさない。何も生み出さずただ在るだけの」
目の前に差し出された小さな花は、項垂れ弱々しかった。
「私が持っているのは、この身だけです。他はすべてが借り物、まやかしです」
花を握りしめた手が小刻みに震えている。
怒り、苛立ち、悲しみ、孤独。
抑えた声の中に絶望的な思いが見てとれる。
大海人は、背を向け深い息をついた。
切られるような痛みに額田は胸に手をあてた。
「……死に損ないの血を後生大事に被り、命まで賭けて守ろうとする者にも、何も知らず偽物を慕い仕える者にも、私は何も与えることができないのです。死んだ赤子の皮を着て生きているだけの……人の目を気にし怯えながら……ただ、生きたくもないのに生かされている……」
普段は仮面の下に押し隠された、これが真の姿なのか
額田王は胸を締め付けられる思いがした。
玉葛の木に結わえた馬の手綱を引き、大海人は呟くように言った。
目の前に差し出された小さな花は、項垂れ弱々しかった。
「私が持っているのは、この身だけです。他はすべてが借り物、まやかしです」
花を握りしめた手が小刻みに震えている。
怒り、苛立ち、悲しみ、孤独。
抑えた声の中に絶望的な思いが見てとれる。
大海人は、背を向け深い息をついた。
切られるような痛みに額田は胸に手をあてた。
「……死に損ないの血を後生大事に被り、命まで賭けて守ろうとする者にも、何も知らず偽物を慕い仕える者にも、私は何も与えることができないのです。死んだ赤子の皮を着て生きているだけの……人の目を気にし怯えながら……ただ、生きたくもないのに生かされている……」
普段は仮面の下に押し隠された、これが真の姿なのか
額田王は胸を締め付けられる思いがした。
玉葛の木に結わえた馬の手綱を引き、大海人は呟くように言った。