みあげればソラ


母親とは、娘にはとかく自分を重ね、厳しい目で批判的な感情を持つものなのだ。

それが自分に似ているとしたら尚更。

息子には甘いのに、と幸恵は苦笑する。

異性と同性の違いだろうか?

自分と娘の人生がどこか繋がっているような錯覚。

批判して突き放しているように見えて、どこかで頼りたい係わりたいと願う矛盾した感情。

嗚呼、そうだ、わたしが亜里寿に抱いていたのもそんな感情だった、と幸恵は思った。


それでも娘は、純粋な母の愛だけを求めているのだ。

自分をありのままに受け入れてくれる、大きな母の愛を。


「山田さん、今からでも決して遅くはありません。

素直な気持ちで謝って、そして、素直に愛していると、沙希ちゃんに伝えてあげてもらえないでしょうか?」

「それで許してもらえるのでしょうか?」

「許す許さないの問題じゃぁないんだと思うんです。

親として、子を愛しんで守る、その役目を放棄したら駄目なんですよ。

あなたに、わたしと同じ後悔はして欲しくない」


「……後悔」


「そうです」
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