みあげればソラ
「ミア?」
その男は、美亜の目の前に突然現れた。
どうしても、と由貴に請われて駅前のショッピングモールに買い物に出かけた時だった。
「美亜さんの知り合いですか?」
突然青ざめた美亜の様子を心配して、由貴が小声で聞いてきた。
美亜は小さく首を横に振る。
「バカいえ! 父親を忘れる娘が何処にいるんだ」
ちょっとくたびれた中年男は、美亜の父親にしては少し歳が若い。
「急に居なくなって心配したんだぞ」
美亜の頭を撫でるように伸ばされた手を、恐怖の浮かんだ瞳で見つめる彼女の気持ちは外からはわからない。
「すまんが君、少し親子水入らずで話をさせて貰えないかな」
あくまで冷静を装うその言葉が偽りかどうかなど、初対面の由貴にわかる筈などなかった。