みあげればソラ
「ちょっと待った!」
雄一の手が由貴の肩をとらえ、抱き寄せようとしたその時だった。
「再開のラブシーンの前に、事情を説明してよ!
なんだかちっとも状況が呑み込めなくて、イライラしちゃう!」
すっかり周りが見えなくなっていた二人だが、ここは勝の部屋だった。
「ごめん、勝兄ちゃん。
紹介するよ、こちら、僕の高校の同級生で酒井由貴さん。
僕達卒業前まで付き合ってたんだ」
「あら、そうだったの。
でもこの子、今はジョーのところにいるんでしょ?」
「ジョーの?!」
「えっ、ユウくん、ヒロ兄のこと知ってるの?」
「知ってるもなにも、大学受験の時はお世話になったし。
勝兄ちゃんのとこも長いから、知り合いって言うより兄貴みたいな感じかな。
そっか、ユキは今ジョーのとこに居るんだ。
えっ、でも何で?」
「えっとね、話せば長くなるんだけど。
就職したおもちゃ工場がつぶれちゃって、路頭に迷ってるとこをヒロ兄に……、そ、そう、助けて貰ったの!」
身体を売ってお金を貰おうと声をかけた、なんてとても本当のことは言えなかった。