みあげればソラ
母にその男を紹介されたのは、美亜が小学五年生の時。
男はその日から母と美亜が暮らすアパートに転がり込んできた。
いつもは数週間か数ヶ月で姿を消す母の男だったけれど。
彼は、甲斐甲斐しく母の世話を焼き、二人はとても仲睦まじく見えた。
おまけに、夜、店に出る母に代わって美亜に夕食を取らせ風呂にも入れてくれた。
なんと朝も起きて食事を作ってくれたのだ。
それは美亜にとって今までにない驚きで、初めて体験する家庭生活そのものだった。
定職を持たないその男が、普通の父親とは何処か違うことは子供の美亜にもわかっていた。
それでも、彼女にとって彼は母より家族に近い存在になっていた。