みあげればソラ
「ミアっ!!」
俺はもう無我夢中で美亜の名を叫びながらホテルに駆け込んだ。
まだ警察は到着していない。
坂田が直接俺に連絡を入れてくれたから、俺が現場に一番乗りだ。
そこで俺の目に飛び込んできたのは、全身血まみれで立ちすくむ美亜の姿だった。
いつもは頭の上で纏めている長い髪が、だらりと下ろされ実亜の身体にまとわりついていた。
「ミアっ!!」
俺の呼び掛けに、美亜がゆっくりとこちらを向いた。
頬が赤く腫れ、口元には血が滲んでいた。
衣服に多少の乱れはあるが、美亜の服についた血はどうやら彼女のものではないらしい。
「ミアっ!!」
俺は美亜の名を叫びながら、その身体を掻き抱いた。
「もう大丈夫だ。怖かっただろ……」
いつもなら、正面切って抱き締めると硬直する身体が、何故かゆるりと俺の腕の中に納まった。
我を忘れるほど怖かったに違いない。
「ひろゆき・さん」
更に驚くことに、抱き締めた温もりの中から微かな声が聞こえたんだ。