みあげればソラ
間もなく、パトカーと救急車がけたたましくサイレンを鳴らして到着した。
その中には、難しい顔して俺を睨む坂田の姿もあった。
『余計な口出しは無用だぞ』
その目には無言の圧力があった。
簡単な事情聴取の後、美亜と被害者は別々の救急車で病院に搬送されることになった。
半裸で呻く被害者が担架に乗せられ運ばれていく。
その姿は血まみれだったが、血色があった。
——ありゃ、致命傷じゃねぇな……
ほっと胸を撫で下ろす。
殺したいほど憎い相手でも、命を奪っちゃ美亜が殺人者になっちまう。
正当防衛だとしても、美亜にとってそれが良いこととは思えない。
——取り敢えず良かったんだよな……
俺は美亜と一緒に救急車に乗り込んだ。