みあげればソラ
「さあミア、家に帰ろう」
診察と事情聴取を終え、取り敢えず解放された俺達。
「ユキが責任感じてオロオロしてるに違えねぇ」
俺は美亜の手を引いて歩き出した。
「うん」
と小さく頷きながら、美亜は俺に引かれた手に指を絡めて握り返した。
「ひろゆきさん、ありがとう」
俺を横から見上げながら、美亜はゆっくりと言葉を紡いだ。
とり戻したばかりの美亜の声は、少し掠れて聞き取りにくい。
「ありがとうはこっちだぜ」
俺は照れてしまって、美亜を直視できない。
「わたしね、ぜったいにがまんできないとおもったの」
「当たり前だ」
「がまんしたのもわたしなのに、いまはもうがまんできないと思ったの。
気がついたらあたし……」
「ミアは悪くねぇよ」
お前がやらなきゃ、俺が代わりにあいつをやってた。
「わたしにふれていいのは、……」
あなただけ……
美亜の唇がそんな言葉を吐いたか吐かなかったか。
俺の腕に縋りつく美亜の温もりに我を忘れて、俺は全てを許そうと心に決めたのさ。