みあげればソラ
太一は本当に美味しそうにカレーを頬張る。
「おかわりあるよ」
「やった!」
食べ盛りの太一が一人増えただけで、食卓が賑やかになるから不思議だ。
「気持ちいいくらいよく食べるね、さすが成長期。
普通盛でいいかな?」
美亜の問いかけに、太一が大きく頷いた。
「カレーは大好物だし。特に姉ちゃんのカレーはね」
「市販のルーだよ。ママのカレーと大差ないでしょ」
「母さんのカレーはニンジンが大きいんだ。姉ちゃんはちゃんとニンジンを小さくしてくれてるし」
母の思いは、ニンジン嫌いを太一が克服すること。
沙希の思いは、太一が気持ちよくニンジンを食べること。
いつの間にか、ママを母さんと言いかえるようになった太一だけれど。
母の思いに振り回される現状はなかなか変えることは難しい。
母に愛されたいという思いは、どの子供にも共通なのだ。
沙希だってそうだった。