みあげればソラ


母がその男と婚姻関係にあったかどうかは定かではない。

それでも美亜はその男のことを「ユウパパ」と呼んで懐いていた。

きっとそれが母には気に障ったのかもしれない、と美亜は思う。

美亜がその男に懐けば懐くほど、母はその男に冷たく当たるようになっていった。

食事が不味いとか、部屋が汚いとか。

家事を全くしなくなった自分を棚にあげ、その男をなじる母の声はどんどんと大きくなった。

そして次第に荒れていくその男の横顔から理性が消えたことに、美亜が気付くはずもなかった。


美亜が中学も三年にあがった時、その男は終に理性を手放した。

母似の美しく成長した美亜を目の前にして、酔った勢いもあったかもしれない。

けれど、それはきっかけに過ぎなかった。


母の留守を狙って繰り広げられる淫らな行為。

優しかった「ユウパパ」の豹変に戸惑う美亜。

幼い彼女に男の力に抗う勇気も知恵もなく、その行為は母を置き去りにしたまま続けられた。

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