みあげればソラ
「沙希ちゃんも、太一くんも、どうしたの?
誰か来た?
って、あれ、もしかして沙希ちゃんのお母さんですか?」
玄関先での騒ぎを聞きつけて、美亜がやっと起きてきた。
「ったく朝っぱらからなんだっ?
はた迷惑だろ、こっちはたまの休みなんだ、ゆっくり寝かせろよっ」
その後から、不機嫌マックスの弘幸が続いて起きてきた。
「ん、なんだなんだ、旦那に逃げられそうな太一の母ちゃんか。
子供にも逃げられちゃ困るもんなぁ〜」
弘幸は沙希と太一の母親を見るなり、辛らつな言葉を躊躇なく浴びせかけた。
「な、なにを根拠に……、し、失礼なっ!」
怒り出すところを見ると、まだそこまで深刻な事態ではないらしい。
「あんたがそんなだから、旦那が家に寄りつかねぇんじゃない?」
「な、なっ……、なんでそんなことを……」
「子供にそんな心配かけんなよ、ったく、ただでさえ姉ちゃん出てって心細いんだからさぁ」
「太一!」
「子供に当たんなよ」
「あんたは余計なことをっ!」
「でどうなんだよホントのとこ」
「貴方には関係のないことです」
「なくはないだろぉ〜、その言いい方傷つくなぁ〜」
弘幸に捲し立てられて、終に山田美希は弱音を吐いた。
「主人は……、主人は夜勤の仕事に変わっただけです!」