みあげればソラ
「ミア〜、腹減ったぁ〜」
美亜をその腕に抱きながら、弘幸が呻いた。
「ん……、……もうっ、この腕放してくれなきゃ起きられないでしょ!」
美亜が身を捩ってその手から抜け出そうとしても、なかなかそれは叶わない。
「こらぁ、この手をどけてっ」
ペチペチと美亜は弘幸の手を叩いたけれど、彼にしてみれば、そんなの痛くも痒くもないだろう。
「腹も減ったけど、放したくない」
弘幸の美亜を抱く手に、一層力が篭った。
美亜に言葉が戻ってからも、彼女を抱いて眠るだけの関係にまだ変化はない。
弘幸は恐れていた。
もし美亜が彼を拒絶したら、その時が二人の関係の終わりだ。
それだけは耐え難い。
と、突然、美亜が勢いつけて起き上がった。
「お弁当作らなきゃ、沙希ちゃん遅刻しちゃうよ」
弘幸は呆気にとられて美亜を見る。
暫く固まったあと、可笑しそうに表情を緩めた。
「くっ……、美亜、沙希はもう家に戻っただろ」
くるりと振り向いた美亜の顔には少しだけ戸惑いがあった。
「そっか……」
「ユキも昨日は雄一のとこだし」
「だっけね……」
「だから今日は俺達だけだし。
もうちょっと寝坊しても問題なぁ〜し」
弘幸は美亜の手を引き、再びベッドに引きずり込んだ。