みあげればソラ


その日、二人は初めて身体を重ねた。


不思議なことに、美亜に以前のようなセックスに対する嫌悪感はなくなっていた。

それは相手が弘幸だったからかもしれないし。

あの日、望まないセックスをきっぱりと拒絶することができたからかもしれない。


「ミア、愛してる」

一つ一つの行為を確認するように、弘幸が大切に美亜を抱く。

「うん……、わたしも愛してる」

身体を合わせ、愛を確かめ合う。


そこにあるのは安らぎと幸せであるべきなのに、美亜にはどうしても拭いきれない疑問があった。


こうして愛を確かめる時でさえ、何故、女は受身でなければならないのか。


幸福を感じながらも、男を受け入れる自分を醜いと感じてしまう。

生きる為に男を受け入れた自分を重ねてしまう。

それが女の性だと言えばそれまでだが、美亜にとっては耐え難い現実だった。


愛と打算の境界線は何処にあるのか。

弘幸の庇護にある自分が、打算なしに愛を口にしていると本当に言えるのか。


「ミア……」


抱きしめられた弘幸の腕の中で、美亜は火照る身体とは対象的な、冷めた気持ちでそう考えていた。

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