みあげればソラ
「ま、一時的なことかもしんないし、気にするな」
その男は、さして気に留める様子もなくそう言った。
「俺は袴田弘幸(ハカマダヒロユキ)、ヒロ兄って呼んでくれ。ってか、呼べねぇのか」
ま、しゃぁないな、とヒロ兄は笑った。
「行くとこねぇなら、ここにいて構わねぇし。美亜がいたいなら」
その言葉に大きく頷いた。
『ヨロシクオネガイシマス』
そう大きく口を動かして伝え、頭を少しだけ動かした。
この男も、いつか突然豹変するのだろうか?
そんな不安も無いわけではなかったが、今の美亜には居場所が必要だった。
何より、何も聞かないヒロ兄の優しさが嬉しかった。
彼なら信じられると思った。