みあげればソラ
確かに、ぱっとしない古めかしいオモチャ達だった。
一時、レトロブームが巻き起こって売上げが伸びて、工場を拡張して増産体勢を整えたのだ。
その時の借金が工場の資金繰りを圧迫して、倒産に追いやられたのだと聞いた。
今どきの子供にはやっぱり受けなかったのかもしれない。
ゼンマイ仕掛けのブリキのオモチャ達。
――あたしは好きだったけど。
「引越し、急がせて悪いね。
この寮も来月には取り壊しだ。
保証人にはわたしがなるから、住むとこ早く決めた方がいいと思ってね。
少ないけど、これ退職金。
アパートの敷金にでもあてておくれ」
手渡された茶封筒を握り締めて、彼女は力なく頷いた。
社長の心使いは嬉しかったけど、先の見えない生活が不安で仕方なかった。
——兎に角、アルバイトでもなんでも、仕事探さなきゃ……
それなりに倹約はして、貯金も少しはあった。
けれど、いきなり月数千円の寮生活から、数万円のアパート暮らしなんて無理がある。
彼女の貯金は見る間に消えていった。