みあげればソラ
兎に角早くお金が稼ぎたくて、手っ取り早く選んだのはコンビニのアルバイト。
小さなオモチャ工場でのんびり仕事してきた由貴には、嵐の中に放り出されたような目まぐるしさだった。
POSレジの打ち方から、在庫の確認、商品陳列の作業、宅配便の取次ぎに支払い代行の手続き等々。
扱う商品の数が多い上に、覚えることが山積みで、彼女が見習いから正規採用になるには時間がかかった。
当初の目論見は大きく外れた。
ただでさえ安い時給に、見習い期間は就業時間も制限されて、頭も身体もクタクタなのにお給料は雀の涙。
3ヶ月を待たずして、由貴はアパートを出る決心をした。
保証人になってくれた社長に迷惑かけるわけにはいかないと思ったのだ。
少ない荷物をキャリーケースに詰め込んで、彼女は宿無しになった。
24時間営業のファーストフード店で、夕食代わりのハンバーガーとポテトで朝まで粘って過ごした。
三日に一度、漫画喫茶に泊まってシャワーを浴びた。
不規則な生活と寝不足で、疲れはどんどん溜まっていって、由貴の心も身体も限界に近づいていた。