みあげればソラ
暗くなった駅前の裏通りを、由貴は決心が付かぬまま彷徨っていた。
ネオンの灯りが眩しくて目を細める。
綺麗に着飾った女性達が、強面の黒いスーツを着た男の人と談笑している。
世界が違う、そう思った。
自分には何の価値もない、生きる価値さえないのだと思ってしまった。
仕方なく諦めて、通りから逃げようとした時だった。
「オニイサン、アソバナイ?」
片言の日本語で通りを歩く男性を呼び止める声が聞こえた。
振り返るとそこには、極普通の身なりの女性が、極普通に立っていた。
彼女は手当たりしだいに若い男性に声をかけ、程なく一人を捕まえると腕を組んで歩き去った。
そのあまりに自然な動きに目を奪われた。
――そっか、あぁいう風にすればいいのか。
少しだけ希望が見えた。