みあげればソラ
その男は由貴の手首を掴むと、そのまま引きずるように彼女を近くのホテルに連れ込んだ。
「あら、ジョー、あんたこれから仕事じゃないの?」
受付でそう名前を呼ばれた彼は、「おばちゃん、この子預かってて」そんなことを言った。
「なに? わけありなの?」
「いや、この子、俺の妹のダチ。家出したらしいから逃げないように見張ってて。俺、部屋とるからさ。帰りに連れて帰る」
「はいよ」
——えぇ〜、なになに?! あたしをどうするつもりなの???
「俺に買われたんだ、おとなしくここで待ってろ。俺はこれから仕事だから」
彼はそう言うと、由貴をホテルの部屋に置き去りにして出て行った。
ホッとしたのが本音。
理由はわからなかったけど、暫くここで待っていればいいらしい。
そう納得したら急に眠くなって、由貴はそのままホテルのベッドで寝てしまった。
――布団で寝るの何日ぶりかな、軽く一月ぶり?
柔らかい布団に包まれて、由貴はそれだけで幸せな気分で一杯だった。