みあげればソラ
「だたいまぁ〜
あれ? おふくろ帰ってる?」
暢気な声が玄関から聞こえてきた。バカ息子のご帰宅だ。
「お帰り弘幸。元気そうじゃない」
「お陰様で。そっちこそ」
「元気じゃなけりゃ、帰って来れないでしょ」
「確かにそうだ」
ハハハ……、と笑った顔が無駄に美しい。
その笑顔に見惚れながらも、叱咤しないわけにもいかない。
一応彼女は彼の母親なのだ。
「何その髪の色?金髪に染めてんの?」
「これが今の流行なの。もともと俺の髪、色薄いし、端正な顔立ちが引き立つでしょ」
「それ自分で言う?!」
「伊達にイギリス人の血が混じってませんから」
「そりゃそうだ」
「どれくらいこっちに居るの?」
「ま、3週間ってとこかな。
って言うより、あんた何ハーレム作ってんの!
女三人に男一人は世間的に不味いでしょ」
「だって仕方無いだろ。みんな行く場所がねぇんだから。この寒空に放り出せつぅのかよ」
「それにしたって……」
「無責任なあんたに何も言う資格はねぇよ」
「客観的な意見を言えるのは、今の状況じゃわたししか居ないでしょ」
「美亜がいる」
「あんたは美亜に頼り過ぎよ」
——ほんとバカ息子が!