みあげればソラ
ところが、階段を下りた先に沙希が見たのは、正装した父母と太一が、今、正に出かけようと靴を履き玄関に立ち尽くしている姿。
三人ともバツが悪そうに、表情が暗い。
「……お姉ちゃん」
そう小さく呟いて、太一が更に顔を歪めた。
「あれっ? みんな出掛けるの?」
冷静を装って、沙希はそう問いかけてみたものの、三人が彼女に内緒で出かけようとしていたのは明白だった。
「今晩はお婆様に御呼ばれして、太一の合格を祝うお食事会なの」
「あれっ? それって今日なの? 聞いてなかった……、って言うか、待って!
直ぐ仕度するから、お風呂も入ったし、着替えたら直ぐだし」
慌てて階段を駆け上ろうとする沙希を、母は冷たい視線で見上げて言ったのだ。
「沙希、あなたは来なくていいの。
夕食は用意してあるから、一人で食べて」
その声は、明らかに冷淡な通告だった。