みあげればソラ
「えっ? どういうこと?」
少し上ずった声を、どうにか沈めて沙希は聞き返した。
「あなたが居ると、お婆様のご機嫌が悪くなるし。
太一の晴れの席に、あなたは相応しくない」
「ママ……」
泣きそうな顔で母の影に隠れ、母の上着の裾を軽く引っ張りながら太一がか細く呟いた。
その姿を見て、沙希は自分のとるべき道を悟ったのだ。
「だねぇ〜、あたしもお婆様とか苦手だし。行ってらっしゃい、あたしはお留守番してる」
「……お姉ちゃん」
「悪いな沙希」
太一と同様、暗い表情の父が小さな声で呟いた。
「遅れるわ! 行きましょう!」
勇む母の背中に続いて、父と太一が慌ててその後を追った。
そして沙希は一人残された。