みあげればソラ
俺はその正体を確かめるべく、ベンチに近づいていった。
怖いもの見たさと、単なる好奇心。
いや、自分の目の錯覚を確かめたかっただけかもしれない。
と……、そこに蹲っていたのは、黒いパーカーのフードを被った紛れも無い人間。
「浮浪者、にしてはちっちゃいな。おい、こら、名を名乗れ」
それは、どう見ても高校生くらいの少女だった。
「こんな薄着で凍死するぞ! 親に怒られたか? まさか家出? にしちゃ、着の身着のままだな」
計画性が足りねぇぞぉ、と黒い塊に吼えてみる。
が、塊は無反応。
——無視か……
俺は仕方なく踵を返し、公園入口の自販機にポケットから小銭を投入。
ホットティを手にして彼女の元へ戻った。
「ほら、温かい飲み物。気にするな、奢ってやる」
ペットボトルを握らせようと、膝を抱える手を掴んだ。
——冷てぇ〜
その冷たさに絶句する。
こいつどんだけここにこうしていたんだって話。