みあげればソラ

その間、俺達の関係は深まった、と言いたいところだが。

深まったのは、俺の恋心だけ、かな……

何度か、良い雰囲気で美亜の心に触れそうになった。

唇を重ねて、抱きしめて……

その途端、美亜は人形になる。

意識を手放して、気の抜けた人形になっちまうんだ。

「美亜……」

その瞳に映っているのは、たぶん恐怖。

よっぽど怖い思いをしてきたんだな、きっと。

俺が欲しいのは、美亜の身体じゃなく、心。

だから俺は美亜には触れない決心をした。

正気の美亜は、俺を慕ってくれている。

俺を男として……、は見れなくても、少なくとも頼れる兄として、良き隣人として慕ってくれている。

増えてきた、照れてはにかむ仕草も、目を輝かせて見つめる仕草も、美亜の心が回復している証拠だ。