みあげればソラ
「お前、もしかして凍死寸前?! 言葉も出ないほど衰弱してる??」
見たところ、手荷物一つ持っちゃいない。
俺は慌てて自分の首からマフラーを剥ぎ取ると、そいつの首に巻きつけた。
そのまま片手を引き、背負うように少女の身体を担ぎ上げる。
「問答無用、即刻保護するぞ。言い訳、反論は意識戻ってからゆっくり聞くから」
確かな重みに、放浪していたわけじゃなさそうだと少しだけ安堵する。
俺はポケットから携帯を出すと、美亜を呼び出した。
「あ、美亜、俺。
凍死寸前の女の子保護したから、風呂沸かしといて。
それと着替えと寝床。
温かい飲み物」
俺は一方的にそれだけ言うと通話を切った。
人目につかない内に早いとこ帰らないと。
俺は少しだけ歩幅を広げて歩き出した。