みあげればソラ

「お前なぁ〜、こんな節操無く仕事選んでるんじゃねぇぞ。

いったいお前は何がやりたいんだ?」

由貴の手にした求人票を眺めて弘幸が言った。

「別に、何がやりたいってことは無い、です。

求人条件と合えば申し込んで……」

「化粧のケの字も知らねぇお前が、化粧品の販売員ってのは無理があるだろ?

それにこのテレホンアポインターってやつ、ノルマ制じゃねぇか?」

隣りで美亜が一緒に頷き、求人票に見入っていた。

「で、でも、正社員を念頭に探してたら職種はそんなに選べない……」

「由貴、お前、こんだけ面接受けて落っこちて、何が自分に足りねぇって思った?」

「えっと……、学歴とか、資格とか?」

「まぁ、それは当たり前だな。他には?」

「働く意欲?」

「だな」

正解で〜す、と頭を撫でられて由貴は言葉を失った。
< 63 / 207 >

この作品をシェア

pagetop