みあげればソラ
「美亜、あと宜しく頼む」
帰るなり、美亜は電気毛布で彼女をくるんで温めた。
暖房をガンガンに炊いた室内で、美亜は彼女を抱きすくめ背中をさすった。
確かに、いきなり風呂に入れるのは不味いな。
必死に身体をさする美亜の様子を、俺は妙に感心して眺めていた。
「俺、先に風呂入るわ」
俺だって冷えた身体を温めたい。
それに少し落ち着いて考える時間も必要だ。
湯船に浸かって俺は今の状況を客観的視点をもって考察した。
未成年者保護。身元不明。
――いきなり担いで連れて来たのは不味かったか……
俺、誘拐犯になりかねねぇぞ。
「坂田、調べてくれ。昨日から今日にかけて、東京圏内で家出人の捜索願が出てねぇか。
女子、推定年齢15〜18歳、黒のジャージ上下、ショートヘア、中肉中背」
風呂から出るなり、俺は、警視庁に入った大学同期の友人に電話をかけた。
って言ってもぺエペエの警官じゃねぇぞ。
奴は国家公務員試験トップ合格のエリートだ。
「なんだヒロ、エンコウでももち掛けられたのか」
坂田はだるそうにそう言った。
「うるせぇ、四の五の言わずに調べろっ! 俺を誘拐犯にしてぇのかっ!」
そんな坂田を怒鳴りつけ、「少し時間をくれ」という坂田に、「兎に角早くなっ!」と念押しをして電話を切った。