みあげればソラ
「お兄ちゃんはいいな。
ハーフでもそんなにみんなと違わない。
髪も染めればいいし、目はカラコン入れれば隠せるし。
でも……、
わたしの肌の色は隠せない」
確かに、イギリス人の父を持つ弘幸は、髪は薄い茶色、瞳は薄いグレー。
同級生と並んで歩いていてもそれほど違和感はなかった。
「何言ってんの!
世界の大半は有色人種だよ。
日本人だって、世界から見れば黄色人種。
肌の色を気にするのは、あんたがこの狭い日本にいるからだよ。
亜里寿も早く大人になって世界にお行き。
そうすりゃ、そんな考え吹っ飛ぶよ」
「でも……、ママ、ここは日本だよ」
「あぁ、もうっ、ごちゃごちゃ言わない!
亜里寿、あんたは綺麗だよ。
誰が何と言ったって、それは変わらない。
人と違うからこそ価値がある。
今にわかるよ」
「ママ……、
そんな価値より、わたしはみんなと同じ普通が良かった」
亜里寿はそう言って、白いブラウスから覗く自分の褐色の肌に爪をたてた。