みあげればソラ
『えっ、母さん海外取材なの?
不味いな、俺、連休中は忙しくて帰れないよ』
『えっ、なに? 女?』
『だったらなに?』
母さんには言われたくない、と弘幸は成田から電話してきた幸恵にウンザリした声で答えた。
『お金は渡してあるから困らないとは思うんだけど、ちょっと学校上手くいってないみたいだったから』
『わかった、俺、連絡してみる』
『うん、ありがと。頼りにしてるよ』
『ったく、無責任だよな。相変わらず』
『食べてく為には働かないとね』
『自分が現実から逃げたいだけだろ』
『どういう意味よ』
『まんまだよ。
しがらみから逃れて、海外で羽を伸ばしたいだけだろ』
『仕事だよ』
『仕事という名の趣味。いや麻薬かな』
『母親に対して酷いいいようじゃない』
『母親らしいことなんて数えるくらいしかしてねぇじゃん』
『産んであげた』
『そりゃどうも』
『十分でしょ』
『母さん、それそのまんま亜里寿に言える?』
『言えるわよ……、言わないけど』