みあげればソラ
だから今、彼女は弘幸の向き合う現実に目を背けることはしない。
息子が拾ってくる幸薄い少女達も、彼女達の未来も。
幸恵にとっての現実なのだ。
否定も肯定もしない。
そのまま受け止めて、一緒に生きていく。
その覚悟が彼女を生かしているといっていい。
「ねぇ、美亜」
幸恵の呼びかけに美亜が振り向いた。
「あんたが弘幸に心を開いてくれたらねぇ」
美亜の瞳が不安に揺れた。
「あの子はあんたのこと、ほんとに大事に思っているよ」
それでも美亜の瞳は定まらない。
「あの男とは、ぜんぜん違うよ。
あんたにだってわかってるだろ?
あたしだって、あんたのことは娘みたいに思ってる。
もう怖がるものなんてなんにもないんだ」
幸恵の言葉を聞いてなお、美亜は静かに目を閉じた。