みあげればソラ
「マサルわりぃ〜、こいつどうにかしてくれ、俺今日は指名三本入って身動きとれねぇんだ」
弘幸に席を立たされ、肩を掴まれて由貴は店長の山田勝に引き渡された。
「仕方ないわね、こっちいらっしゃい」
「わ、わたし……」
「わたしだって男くらい……、その後なんて言うつもりだったの?
ゆっくり聞かせてもらいたいわぁ」
「あ、あの……」
「ここじゃ営業の邪魔なのよ、静かなところでゆっくり聞かせてもらうわよぉ」
肩をがっちりと掴まれたまま、店の奥を通ってエレベーターに乗せられた。
「この上があたしの事務所兼自宅。ベットもあるわよぉ」
「いやっ……」
思わず身体を捻って掴まれた腕から逃れようとしたけれど、その力は思いのほか強かった。
「あたしだって一応男だからね、逃げようったってそうはいかないわよ。
あたしがジョーに怒られちゃう」
大丈夫、とって食いはしないわよ、あたし女に興味はないし、と勝はニヤリと笑ってそう言った。