みあげればソラ
「あなた、ジョーに拾われた子でしょ」
最上階の自宅居間のソファで、紅茶のカップを目の前に差し出されて由貴は戸惑いを隠せないでいた。
勝は由貴の隣りにぴったり寄り添うように腰かけて、彼女の顔を覗き込むように聞いてきた。
「勉強して大学行くんじゃないの?
それが何で男遊びなんてしようとか思っちゃうのかしら?」
白状しなさい、と勝は真直ぐな目で由貴に詰め寄ってきた。
「わ、わたし……、自分に自信がなくて……」
「自信? そんなのあしだって無いわよ」
「えっ、でも、マサルさんはあのお店の店長さんなんでしょ。あんな立派なお店、凄いです」
「あら、ありがと。
そんな風に言ってもらうと、あたしもちょっと自信つくわね」
良い子なのね、と勝は由貴の頭を優しく撫でた。
「わたしは、親もいないし、身寄りもなくて。
高校しか出て無くて、職もなくて。
ヒロ兄に拾われたけど、結局何も出来なくて……」
「勉強中なんでしょ」
「でも、わたしもう二十歳ですよ。
これから大学入って将来を考え直せて言われてもピンとこなくて」
「だから男を知って、男に溺れようとか思っちゃったわけ?」
「そ、そんなこと……」
由貴が否定の言葉を口にするより早く、勝の手が由貴の膝をガチリと掴んだ。