私を変えた彼のお話
途中にある暗い林のところに差し掛かったとき不安が込み上げてきたが、すぐに通り過ぎようと足を速めた。

が、不安は的中してしまった。

急に足を掴まれた私はバランスを崩し、コンクリートに頭を打ち付けた。
あまりの衝撃に声を出すことも出来なかった私はそのまま林に引きずり込まれ、口を手で塞がれてしまった。

朦朧とする意識の中で見たあの男の顔は一生忘れない。
大きい目玉、豚のような鼻、無精髭の生えている中年の男だった。
私から見たら獲物を手にした怪物そのものだった。

ただ、私の純潔が奪われている感覚だけが体に響いていた。
ぐちょ、ぐちょっという生々しい音と臭い息と下から突き上げられる感覚。

痛い。助けて。

その言葉を発することもできないぐらい絶望していた。

涙が私のこめかみを伝い、耳を伝い、地面を濡らした。

痛い。助けて。助けて。

心の中では叫んでいた。
声は、出なかった。

男の汚い液が私の中に出されるのがよくわかった。
男は事を済ませるとそそくさと帰って行った。

その間の時間はおよそ5分もかからなかったと思う。
でも、私には何時間にも感じられた。

呆気なく私の純潔は奪われてしまった。知らない男の手によって。

遠のいて行く意識の中で、口の中にはまださっき飲んだオレンジジュースの味が残っていた。
< 6 / 12 >

この作品をシェア

pagetop