Love Trap〜危険な罠は甘い蜜の味〜
「こんにちは」

「おはようございます、井上さん」


蜜葉は、会社で擦れ違う
様々な社員に、度々挨拶していた。

エレベーターに乗り込むと
蜜葉は俺に話し掛けてきた。


「これからミーティング室に行きますね。そこで衣装を見せますから、宜しくお願いします」

「嗚呼…はい」


俺は少しだけ、躊躇いがちに
応えた。

でも、蜜葉はふふっと笑って、俺に近寄った。


「そんなに緊張しないで?何時も通りの倉田さんでいてくれれば結構ですから」


そう言って、俺の頬に
蜜葉は手を添えた。


「だから、もっと肩の力を抜いてください♪」


チュッ…と小さい音が
エレベーター内に響いた。


「…!!?」


俺は慌てて、
蜜葉の顔を見ながら後ずさる。


「あっ、えへへ…ごめんなさい。スキンシップなんです…」


蜜葉は少し悪戯に微笑んだ。

俺は蜜葉の唇が触れた部分に
手を添える。

とても柔らかかった…。

艶っぽく潤うピンク色の唇。

そんな唇が、さっき俺の頬に
触れていただなんて――…。

考えただけでも、
俺の理性は危うかった。

彼女は自分の立場に気がついていない。

そんな事したら、
どうなるのか…解ってんのか?


「バカな女――…」

「え…んんっ――」


俺は気がついたら、
蜜葉を抱き寄せ、無理矢理口づけをしていた。


「んっ…あ……」


蜜葉は必死に、俺の胸を押して抵抗する。

でも俺は、離すまいと更に強く蜜葉を抱きしめた。

我慢出来なくて、俺は
蜜葉の口の中に舌を進入させる。

すると蜜葉は逃げ惑うわけでも無く、ただひたすら俺に舌を絡ませてきた。

こいつ……何考えてんだ?



あの日の事を思い出す。

蜜葉と並んで歩いていた――…

――…あの男。

二人で手を繋ぎ、
賑やかな街中を歩いていた。


あいつ…蜜葉のオトコ?

……マジムカツク。

蜜葉……蜜葉……

俺、お前を他の男になんて
渡したくない。


だから――…

今はあんな奴の事、
忘れさせてやるよ――…。



< 5 / 7 >

この作品をシェア

pagetop