死の百物語と神は云う。

○7:ベビーシッター

【針谷美里】


「次は……宇江原さん、かな?」


 悠夜さんがそう言い出したので、私は慌てて声をだした。


「次は私ですっ」


 その場にいる全員が、私の方を向いた。

 そうですよね……今の今までずっと何も話さなかったのだから、「いたっけ?こんな女」とか思われていますよね……うう……。

 何も話さなかったというより“話せなかった”のは、この場に慣れなくて話すことを遠慮していたっていうのもあるんですけどね……。

 しょんぼりと肩を落としていると……。


「キミ!キミ!名前は?!」

「へっ?」


 隣に座る、宇江原くん……でしたっけ?宇江原くんが、私の手を取りキラキラとした目で見つめてきた。


「美里……です」

「美里ちゃん、ね!キミ、ホントーにかわうぃよね!よかったらメアド交換しない?友達になろうよ!」


 宇江原くんのとある言葉を聞いた途端、みんなは何かに気が付いたらしく、小さく「あ」と発した。

 それは……。


「……『美里、ちゃん』?」

「あっ、嫌だった?だったらみーちゃんとか、どう?かわいいっしょ?」

「……年上に美里“ちゃん”やなんて、アンタ、ええ度胸しとるやんかー!」

「え」

「ホンマに信じられへん!年上に“美里ちゃん”やなんて!親に言われへんかったん?!年上には“さん”をつけやって!」


 私の変わりように、宇江原くんはただただボー然としていた。
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