【短編】切符
すれ違う想い
こんな筈ではなかった。
喜んでくれると信じていたリョウがこれほど、露骨に厭な顔を見せるとは
思ってもみなかった。
「それで?キミは、勝手に決めて来ちゃったんだ・・・」
リョウは膝を抱えて座っている。
膝の間に顔をうずめるように、うなだれたまま
眉根に皺をよせて上目遣いにマユを見ている。
膝の上で組まれた手の中指がせわしなく小刻みに動いている。
いらだっている時の、リョウの癖だ。
「勝手にって・・・。
私、行くよ。
リョウが嫌なら友達と行く」
マユは挑戦的に言い放った。
「で・・・?」
「でって?」
マユはリョウの顔をのぞき込んだ。
「で・・・?」
リョウは不機嫌に同じ言葉を繰り返す。
「だって、最初に記念日は旅行行きたいねって言い始めたのリョウの方だよ。
だから、無理して二人分の切符買って、お休みも替わってもらって・・・。
私だって、二人きりで過ごしたいって思ったからさぁ」
リョウは、そうではなかったのかと
マユは切なくなった。
喜んでくれると信じていたリョウがこれほど、露骨に厭な顔を見せるとは
思ってもみなかった。
「それで?キミは、勝手に決めて来ちゃったんだ・・・」
リョウは膝を抱えて座っている。
膝の間に顔をうずめるように、うなだれたまま
眉根に皺をよせて上目遣いにマユを見ている。
膝の上で組まれた手の中指がせわしなく小刻みに動いている。
いらだっている時の、リョウの癖だ。
「勝手にって・・・。
私、行くよ。
リョウが嫌なら友達と行く」
マユは挑戦的に言い放った。
「で・・・?」
「でって?」
マユはリョウの顔をのぞき込んだ。
「で・・・?」
リョウは不機嫌に同じ言葉を繰り返す。
「だって、最初に記念日は旅行行きたいねって言い始めたのリョウの方だよ。
だから、無理して二人分の切符買って、お休みも替わってもらって・・・。
私だって、二人きりで過ごしたいって思ったからさぁ」
リョウは、そうではなかったのかと
マユは切なくなった。