だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「私は抱き枕じゃありません」
「そう言わないで。退屈で死にそうだったんだ」
もう、と思いながら、いつもの湊にほっとしているのも事実だった。
心臓が壊れそうな、あんな想いは、もうしたくない。
「人がどれだけ心配したと想ってるの?」
つんつんとした声で、湊の方を向かずに言い放つ。
少しは反省してくれればいいのに、と想って。
それなのに、湊はより一層嬉しい、というように私を抱き締めた。
離したくない、と腕が言っている。
ここにいて、と首筋に埋めた顔が言っている。
「・・・苦しいよ」
結局、甘い声になってしまう。
言葉にして欲しくて強がってみても、湊の腕の中で私は赤ん坊のように素直だ。
口に出さなくても、湊が私を必要としているのがわかる。
そんな湊を、ずるい、と想う。
それと同時に、いとしくて仕方がなかった。
「・・・ごめん。何度でも謝るよ」
「もう、いいよ」
私がそう言ったのを聞いて、やっと腕の力を緩めてくれた。
ただ力を緩めただけで、私を離そうとはしていなかったけれど。
その腕に、ぎゅっとしがみついていたのは私の方だった。