だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
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三日前のお昼過ぎ。
講義中に携帯電話が鳴った。
着信の名前がお父さんだったので、後でかけなおせばいい、と思ってそのままにしていた。
けれど、何度も着信が続いて留守番電話も沢山入った。
大学の授業中だとわかっている時に、こんなに連絡が来るなんておかしい。
そう思って、授業を抜け出して電話をかけなおした。
「お父さん?どうしたの、今授業中だよ」
「時雨、今すぐ病院に来なさい」
「え?なんで?」
「湊が倒れた」
その言葉を境目に、私の感情は途切れた。
ただ、目の前が真っ白になって、どうすることも出来なかった。
悲しい、とか、驚き、だとか。
そんなものさえ私にはなかった。
なんで、すら。
お父さんの言葉が、違う国の言葉に聞こえて、理解をしなかったわけでもなかった。
聴いた言葉も、内容も、冷静に受け止めていた。
「わかった。落ち着いてるから。今から病院に行くね」
淡々と教室に戻り、教授に事実を告げた。
周りの方が心配そうな顔をして慰めてくれたけれど、平気、と笑うことも出来た。
帰る準備をそそくさとして、今日は早く帰れて嬉しいな、なんて思っていた。
なんてことはない。
ゆっくりと、病院に行くだけだ。