だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
ナースステーションに通されて、そこでやっと腰を下ろした。
何にも動じていない私を見て、お父さんは少し辛そうに笑った。
ママも仕事の顔になっていた。
さっきまで泣いていたはずなのに。
やっぱりママは強くて綺麗な人。
「湊はとりあえず大丈夫だ。最近ひどく頭痛が続いていただろう?それが原因で脳に何か問題があるのかもしれない。一時的に意識を失っていたけれど、脳波も正常に戻っている。しっかりと検査をしてみないとわからないが、大事には至らないだろう」
一気にそう言ったお父さんを見て、私はまだ何も言えないでいた。
私の顔を見て、また少し辛そうな顔になる。
「ただ、検査の結果次第ではわからない。脳に腫瘍や怪しい影があれば、今回倒れたことで悪い影響を与えることもある」
理解はしていた。
言葉も感情も出てこないけれど。
「湊は昔、車との接触事故にあったことがあってね。その時にも、一度ひどい頭痛があったようなんだ。それが、今になって再発しているのかもしれない」
湊が事故?
初めて聴いたな、と思う。
まだ私の知らない湊は沢山いるのだと、知った。
「脳の場合は病状の変化が命取りになる。それだけは、しっかり憶えておきなさい」
そうだね。
お父さんが言うなら、きっと間違いない。
それも、しっかり理解していた。