だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版





胃の中が空になるまで吐き続けた。

苦しくて何度も気を失いそうになったけれど、背中をさする温かい手が私を正気にさせてくれた。



お父さんとママが交互に私の背中をさする。


力強い手と、優しい手。


どちらの手も、私の涙を増やすばかりだった。

制御できなかった気持ちを抑えるように、そっと二人が傍にいてくれた。




呼吸も涙も落ち着いてきた私を、お父さんは湊のすぐ傍のソファーに連れて行ってくれた。

湊の呼吸が届く場所へ。




緑のプラスチックが外されたまま、規則正しい寝息を立てている。

綺麗な横顔が、その胸が上下する度、涙が込みあがってくる。




生きている。



大丈夫。



湊は、生きている。




「今日はこのまま休んでなさい。湊も、夜には目を覚ますだろうから」




心配を含んだ、それでもとても優しい声でお父さんは言った。


私は頷く事しか出来なかった。

今は、それで十分だと思った。




「一度家に帰って荷物を取ってくるから。当分、仕事場に泊り込むことにするわ。仕事しながらだけど、いつでもここに来れるから。時雨ちゃん、湊をよろしく」




そう言って、お父さんと一緒にママも病室から出て行った。

多分、後から何度も様子を見に来てくれるだろうと、少しだけ意識のはっきりした頭で思った。




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