だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
「往復券で」
地下鉄から乗り換えて、JRの駅でチケットを買って時間を待つ。
指定席もしっかり取れたのでゆっくりと待つことにした。
といっても、きちんと調べてきたのであと二十分程で出発出来る。
駅の改札口にいるのは、実はそわそわしてあまり好きではない。
きっとここにも色々なドラマがあって、様々な想いがあるのだろう。
その中に紛れているはずなのに、なんだか孤立している感覚。
そんな場所のような気がする。
喧騒が包む。
機械的なアナウンス。
沢山の大きな鞄を持った旅行者達。
なんだか現実離れしたこの場所は居心地のいいものではなかった。
一人で人ごみの中にいる不安も、私にとっては苦手なものだった。
あまりベンチに座っていることも出来ず立ち上がる。
右手にキャリーケースを。
左手には飲み物と少しのお菓子を持つ。
JRに乗っている時間は三時間程度。
最初のうちは、ぼんやりと窓の外を眺めている。
そのうち眠気に負けて、気が付くとすぐに目的地に着いてしまっている。
きっと、いつも通りだろうと思った。
『――――行き特急スーパー北斗十八号をご利用のお客様は――――』
駅にアナウンスが響く。
少し駆け足で電車へと急いだ。