だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
とんっ。
手のひらでおでこを押されて、私はそのままベッドに寝転がる。
それを見て、ふっと櫻井さんは笑った。
そして、立ち上がって上着を脱ぐ。
じっと私を見つめたまま。
「寝ろ」
上着からタバコを取りだしながら、そう言った。
身構えていた私は、きょとんとした顔をして櫻井さんを見つめた。
「お前、俺がそんなに強引に何かすると思ったのか?」
「はい」
即答した私に、櫻井さんは少しむっとした。
タバコに火をつけて、私に向かってふっと息を吹きかけた。
「ちょっと・・・っ!何するんですか!?」
「お前がくだらないことを考えるからだ。」
そう言って、拗ねたように目を逸らす。
まるで子供だな、と思ってその顔をじっと見ていた。
すると、私の視線に気が付いたのか、目線をこちらに戻してくる。
その目は、少し辛そうに目が伏せられていたけれど、そのままで笑っていた。
触れると泣き出しそうなその目に、なんだか私まで苦しくなる。
櫻井さんが、必死に何かを掴んでいるのがわかった。
自分の意識の中の大切なものを。
向けられている視線に、大切にされているのだと気付く。
本当に、大切に想ってくれているのだ、と。