だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
車窓...シャソウ
電車に乗り込んでほどなくすると、緩やかに景色が流れ出した。
街並みから緑の風景になり、もう一度街を抜ける。
それを何度か繰り返すと平坦な景色が見えてくる。
仕事で幾度となく移動しているので、この景色はとても見慣れている。
けれど、自分の旅行で移動をする時には全く違うのものような気がする。
空は本当に青くて。
目の前の緑が鮮やかで。
揺れる金色の穂が眩しくて。
秋は、私にとってどの季節よりも鮮やかな季節のように想える。
多くの秋の景色を憶えている訳ではない。
だからこそ目の前に広がる景色が新鮮で、より印象的なのかもしれない。
乗車前に買っておいたお菓子を開ける。
冷たい紅茶は軽く汗をかいている。
その、少しだけ水滴を付けたペットボトルを見つめる。
それを手にとって一口だけ飲み込むと、中身はまだ冷たかった。
「もう、すぐに汗だくにはならないね」
独り言のように呟いて、くすりと笑いが漏れる。
袋を開けたお菓子は窓際に置かれたままになっている。