だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
露時雨
透明...トウメイ
晴れた山の上に、一人で立っていた。
空はとても高くて、どうしようもないくらいに青が色濃く目に映えた。
澄んだ空気を吸い込むと、肺が少しだけ軋む。
長期休暇は、私の心を悩ませるばかりだった。
明日には自分の家に帰ろうと思っている。
月曜日からの仕事を考えると、本当は今日帰って土日ともゆっくり家で過ごした方がいいのかもしれない。
けれど、まだ落ち着かない気持ちが、帰る私の足を重くさせていた。
「気持ちいいな」
見上げる空ばかりでなく、ここから見える海の青さも、とても清々しいものだった。
空気の波がない空間。
夜景とは違う風景の色。
夜ではなく、昼間に一人でこの場所に来ることが、函館にいることを実感させる。
函館山。
世界三大夜景と言われるこの場所。
夜は観光名所ということもあり、多くの人でにぎわう場所。
カップルが一緒に夜景を見て、二人で街の光の中から『ハート』という文字を見つけられると、幸せになれる、というジンクスがある。
その怪しげなジンクスは未だに信じられているのだろうか。
それとも、もう街並みが変わってしまって、その文字すら見つけられないのだろうか。