だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
あの後、森川はすぐに第一と企画会議をしていた。
どんなプレゼンになったのかはわからないけれど、うちの社員はみんな熱意を持って仕事をしている。
それだけで、いい仕事になるだろうな、と楽しみにしていた。
風が通り抜けるたびに、少し身震いをしてしまう。
それでも、この空気の中にいると、気持ちがぴんと張るような気がしていた。
時間は十二時。
プレゼンは十時からのはずなので、そろそろ終わる頃かもしれない。
なんだか気になってしまって、森川に電話をしたくなる。
プレゼン中でも構わないだろう。
どうせ携帯の電源は切っているはずだから。
電話帳から森川の名前を探す。
携帯を耳にあて、風の音がしない場所へと移動する。
――――プッ、プツッ――――
『もしもし』
無機質なコール音が鳴るか鳴らないかのところで、森川はすぐに出た。
あまりにもすぐに電話に出たことに驚いて、上手く返事を返すことが出来なかった。
「お疲れ様、山本です」
『お疲れ。どうした、まだ休み中なのに』
気遣う言葉が優しく胸に響く。
ほんの少ししか会社から離れていないのに、ものすごく懐かしい感じがするのは何故だろう。
森川の声を聞いて、仕事がしたいな、と思った。