だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
景色...ケシキ
「今日、プレゼンだったでしょ?どうだったかな、と思って」
『お前、休み中なのに仕事のこと考えてたのか?もっとゆっくり休んどけ』
ぶっきらぼうな物言いも、なんだか心地いい。
そういえば森川はこんな声だったな、と思い出す。
言葉とは裏腹の感情が、声の中に隠れていることを感じ取っていた。
「いいでしょ、気になったんだから。で、先方の反応は?」
『まぁ、悪くなかったかな。ストーリーを必死に考えたかいがあったよ』
森川がストーリー提案をしている姿が、妙にしっくりきた。
落ち着いた声のトーンで相手をじっと見つめる姿。
そこから落ちる言葉は、不思議な感覚を持って相手に届くのだろう。
「そっか。どんなストーリーにしたの?」
『うーん、今話さないとダメか?なんか照れくさいな』
森川の声が照れている。
そんなに言いづらい内容なのかな、と思って余計気になってしまった。
「企画書を読むより、森川に説明して欲しい」
ぬるくなったミルクティに口をつけて、電話越しに伝える。
紙の上の内容ではなく、直接聞きたいと思った。
森川が描く、冬の景色と幻想的な映像の構成を。
少し悩んでいたけれど、私の頑固さを知っているので観念したように息を吐いた。
どこか諦めで、どこか優しさを含んだような、そんな音が耳元で聴こえた。