だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版






『そこから、お母さんに抱かれてお父さんに笑う赤ん坊が画面に出る。次は、お母さんに手を引かれている時に、お父さんに走っていく女の子。それを遠くで見ている男の子がいる』




成長の過程をそのまま映す。

それは、記憶に問いかけるメッセージになる。




『次は小学生ぐらいの男の子と手を繋ぐ女の子。主人公は、男の子なんだけどな』




目線のメインは男の子。

それはそれで、不思議な気がした。




『中学生くらいになると、帰り道ですれ違うだけ。話しかけられず、振り向く。でも、女の子はこっちを見ない。目線をもどすと、今度は女の子が振り向く。お互い意識はしているのに、どこか噛み合わない』




中学生。

一番異性を意識して緊張する時期だ。

そのジレンマを、私は知っている。




『高校生になると、一度距離が近くなる。手を繋いで歩いて帰ったりする。でも、いつしか、そこから違う男と帰る背中を見送る。自分も隣には違う女』




なんだか聞いているだけで苦しくなった。

その風景が、目に浮かんできそうで。




『大学生になると、たまに街で見かけるだけ。の、はずだった。でも、不意に出会う』


「どこで?」




話の続きを知りたくて、思わず促していた。

森川はもったいぶって、少し黙ったままだった。




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