だから私は雨の日が好き。【秋の章】※加筆修正版
『どこだと思う?』
「わからないよ。もったいぶらないで」
なんだか悔しい。
森川がこんなに焦らすってことは、きっと私に関係している。
――――――関係、している?――――――
「・・・あ」
『わかっただろう?』
そうか。
だから、こんなにも教えてくれなかったのだ。
「朝焼けの、洞爺湖」
『正解』
森川は、私の意見を採用してくれていたのだ。
あんなちょっとした会話の中の、ささいな情報だったはずなのに。
『行ってみたんだ、第一のやつらと。すごかった。あの景色』
その言葉は、心からの言葉だとわかる。
森川が大切そうに言ったその言葉が、すごく嬉しかった。
『意外と、近くにあるもんだな。心の震える景色は』
目に映るものを、自分で確かめてみないとわからない。
映した景色の捉え方は、きっと人によっても違うはずだ。
けれど、森川はそれを『心の震える景色』と言ってくれた。
そのことが、私をとても幸せにしてくれた。
大切にしていた景色を、人に教えるとき。
それは、同じように大切にしてくれる、と信じている人にしか教えられない。
森川は、きっとその気持ちをわかってくれたに違いない。
そういう森川を、素敵だと想った。